青い空の下で
「それじゃ,1曲目から
「try to remember」からあわせるか。」

そういうと,
真人はギターを弾き始めた。

その音の中には,
もう10年前の真人はいなかった。

プロとして,
あちこちのトップアーティストから声がかかる引っ張りだこの名プレーヤーがそこにいた。

私は,マイクをもう一度強く握ると,
ギターの調べにのって歌い始めた。

とても心地よいハーモニーだった。
朝だから十分な声量はなかったが,
それが逆に思った以上に,
ギターの響きに合っていた。

「いいよ。とっても・・・」

そういいながら,
渉はいつまでも拍手を続けていた。

「じゃあ。
 二曲目は本番までにお楽しみだ。」

と真人は言うと,ギターを置いた。


時計を確認すると,
ライブ本番までまだ6時間あった。

「それじゃ,また後で。」

私は鞄をとると会場をあとにした。  


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