青い空の下で
第15話
私は足早に人ごみの間をすり抜けながら,
携帯を取り出すと,電話をかけた。
「ごめん。点滴の用意しといてくれる?」
「ああ,分かった。途中でぶっ倒れるなよ。
迎えにはいけないぞ。」
相変わらずの素っ気無い言葉を聞きながら,私はその場所へ向かった。
知り合いの受付の子に軽く頭をさげると,
いつもの処置室へ入っていった。
その顔をみて,私はホッとしたせいか,
足元から崩れるようにその場に倒れこんだ。
「ねえ。真人・・・。
今度のライブ終わったら,どこかへ行こう。」
「そうだな。」
真人は遠くへ視線を投げながら,
タバコの煙をふかしていた。
私は,ベットの上で肩まで毛布に包まったまま,真人の憂いに満ちた顔を見つめていた。
もう3年以上も,こんな関係を続けているのに,
私には真人のこと半分も掴めていないような気がして,途端に不安に陥ってしまう。
私だけに優しい真人。
それは明らかに自分で分かっていた。
けど,一番知りたい彼の心の奥は,
決して私でも覗けなかった。
「真人・・・。」
私は次の言葉を続けられなくて,
そのまま真人の首に腕を巻きつけると
タバコのにおいが残る唇に,自分の唇を押し付けた。
そして,そのままこの不安を打ち消すように,身体を求めた。
このままずっと二人で同じ時をすごせるように,願いをこめながら。