青い空の下で
「それでは
『kiss in the rain ・・・・・ agein』」
渉のベースから悲しげなメロディーが流れ始めた。
それはまるで真人自身の心のようだった。
私はゆっくりとピアノに向かうと,鍵盤の上に指を置いて,
ベースから受け取ったメロディーラインを奏でていった。
そして,真人のギターの音が,その上に重なり合って
五線紙から飛び出した音が,キラキラと星のように輝いているようだった。
最後に,私の大好きな真人の声がそのなかにあわさった。
ピアノを弾きながら,私は涙が溢れてきそうになってしょうがなかった。
真人の声がとても暖かくて,私の心は真人でいっぱいになった。
どうしてその手を離してしまったのか。
愛してる,その一言を,あの時に言っていれば
今俺はここで涙することもなかった。
今でもお前のことで心は締め付けられる。
そのやわらかな身体を抱きしめたくてたまらない。
一瞬でもいい,あの時に戻れるものなら
もう二度とお前をはなさない。
必死で堪えていた涙が一筋頬にこぼれるのを感じた。
最後の一音を鳴らすと,会場は静寂に包まれた。
そして徐々に拍手の輪が広がっていった。
それぞれが送ったきた10年の想いがそこには現れていた。