お隣さんの恋愛事情
エレベーターの中にいる間、今頃になって足が痛みだす。普段なら絶対履かないようなヒールが、私の扁平足をズキズキ刺激する。
チーンという音と共に開かれた扉を無理矢理こじ開けるように手で押した。吐き気ムカムカが、後少しで限界だ。
「そんな慌てなくても夜は長いよ?」
芸人男の意味不明な発言なんて私の耳には届くことなく、足を引きずるように歩いた。
が。
またしても難関が訪れた。
前のマンションでは5号室。でも今は6号室だったと思う…のだけれど。
805と806と書かれた扉の間を行ったり来たりするものの、飲みすぎた酒が頭の中で戦争して全くわからない。
「恭子ちゃん何してんの?早く部屋入ろうよ♪」
「うーん…」
そんなことを言われても、もしも開けたドアが間違ってお隣さんちで、うっかり鍵開いてて入っちゃったりしたら、赤っ恥じゃないか。ここは慎重に…
「……ってちょっとあんた!!」
私の返事も待たずに805のドアノブを回し、うっかり開いてしまった部屋に私を引っ張り込む。