実の弟に恋をしました。



噴水の目の前に置かれているベンチに、二人並んで腰をかける。


足元には、数羽の鳩。


「──俺さ…」


雄司は、時折鳩に手をかざしながら、ポツリポツリと語り始めた。



「…親が、いないんだ」


「えっ」



初耳だった。


というか、雄司は付き合ってる間も、一度も家族の話をしたことが無かった。


「俺が子供のころ、二人とも事故で死んだんだ」


「……」




家族を失うことの辛さ。


あたしなんて想像しただけで辛いのに、実際に経験した雄司はどんなに悲しかっただろう。


胸がズキンと痛む。





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