【短編】また…いつの日か
「どうして…ですか?
どうして俺のそばにいちゃダメなんですか!?
俺は奈津にそばにいてほしい…」
あたしがちょうど部のドアを出ようとした時、駿が言った。
あたしは…振り返って微笑んで、また歩き出した。
…微笑む事しかできなかった。
これ以上何か言ったら、涙が溢れてしまうから…
最後に見た駿の目からは、一筋の涙が流れていた。
その日から駿との会話は仕事上での最低限の事だけ。
そして出発の前日、あたしは部長に手紙をわたした。
「これ、あしたの朝、みんなの前で読んでください。」
「本当にいいのか?」
「はい。イギリスで頑張ってきます。
4年間、お世話になりました。」
「いつでも帰って来いよ」
部長の優しい言葉に、胸が痛くなった。
よし、片づけよう!
デスクの上の物を段ボールに詰めていく。
そして、パソコンのメールを消そうとメールを開くと、『斉藤駿介』の文字ばっかり…
仕事中にも、駿はふざけてメールを送ってきていた。
内容をもう一度見ようと思ったけれど、絶対泣いてしまうから、削除のボタンをおした。
最後に「今まで短い間だったけど、ありがとう。
大好きだったよ…」
そんなメールを駿のパソコンに送って、電源を落とした。