愛しいキミへ
「…雅樹は浪人するって…」
「あぁ。母さんにでも聞いた?」
「うん…。M大受けなかったのって私が原因…?」

悲しさでいっぱいの目で問いかけられた。
ふるふるっと顔を横に振り、理由を話す。

「違うよ。M大より行きたい大学があったから…そこを目指すことにしただけ。」

沙菜のせいじゃない。
それだけは、はっきりと伝えておかなくちゃいけない。

「…どこの大学か聞いてもいい?」

付き合っているときに言えなかった俺の本心。
今なら真っ直ぐと目を見て言える。

「K大。悠兄が行ってる大学に行きたい。」

沙菜の気持ちを考えて、沙菜との関係を考えて、行くつもりはないと自分に嘘をついた。
でも、自分自身と向き合って、自分のことだけを考えたら・・・やっぱり俺はこの大学に行きたいと思った。
少しでも悠兄と肩を並べられるようになりたいと思った。

「…そっか。K大に行きたかったんだね…。」
「あぁ。嘘ついててごめん。」

驚いているのとショックを受けているのがわかった。
下を向いて無言になる沙菜。
二人の間を静かな時間が流れる。
ドクドクと俺を急かす胸の音だけが、妙にはっきりとしていた。
・・・これ以上一緒にいられない

「…じゃあ…俺行くね。クラスの打ち上げがあるし…。」

沙菜の横を通り過ぎ、校内へと入った。

今日で最後の高校。
その最後の日に沙菜と話せて良かった。

また屋上に沙菜を一人にしてしまうことが気がかりで、ゆっくりと階段を下りる。
心のどこかに、屋上へ戻りたいという気持ちがあるのだろう・・・振り返りたくなるのを押さえる。
あの日ついた傷を、これ以上大きくしたくない。
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