愛しいキミへ
一通りマンションの周りを探したが、沙菜の姿はなかった。

「沙菜…どこにいるんだよ…。」

もしかして家に帰ってるのかも・・・
そう思ってマンションを見上げた。
すると、屋上に小さな人影が見えた。
顔までは見えないけど、誰だかわかった。
すぐに屋上へと向かう。

カチカチッカチカチカチッ…
エレベーターが来るのが待てずに、早さは変わらないのにボタンを何度も押す。
早く早く早く!!
気持ちが焦った。
早く沙菜のそばに行きたくて仕方なかった-

ギィィィ
少し重い屋上の扉を開けると、傘もささずに雨の中たたずむ沙菜の後ろ姿があった。
・・・何年前だっけ
ここで沙菜の気持ちを聞いたのは
あのとき、自分の気持ちを言っていたら、何か変わっていたのかな?

ゆっくりと近づき肩に触れた。
触れた瞬間、ビクッと肩を動かした。
静かに振り向いた沙菜の顔はびしょびしょだったけど・・・それが涙なのか雨なのかわからなかった。
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