やくざな主人と生意気ペット
車を降り、指定の倉庫に向かう。
「なーんか俺前から思とったんやけどな、なんでこんな取引ん時て絶対こんな倉庫指定するんやろなぁ。なんでか知っとるか、神無月?」
「知るかよ」
「おっ、おるおるっ」
自分から質問しておいて早速脱線かよ。
腹立たしさを抑え、アキラの指差す方を見ると確かに、いた。
まだ暗闇に目が慣れていないせいで正確にはわからないが、大体十人ほどだろう。
「おお、例のロッカーもおるで」
「お前相変わらず目いいな」
よく目を凝らして見ると、集団の中に小柄な男がいた。
身長は165センチぐらいだろうか、暗闇で僅かに顔の辺りに光が反射しているので眼鏡をかけているようだ。
「はーい、薬物中毒の皆さーん、長い間待っていただいて有難うございまーす」
アキラは無駄に明るい声で叫ぶと、ドラッグを入れた袋を連中に見せつけた。
「藤本さん以外の方はもう貰うモン貰うてるんでご自由にお取りくださーい」
アキラがそう言い終わらないうちに群がってくる人間の中には、こはるぐらいの年齢であろう少年もいた。
素人が見ても、皆末期だった。
「ほんであとは藤本さん、あんただけですわ」