秘密の片思い
郁斗が階下に下りて行くと、ちょうど千波夫婦は帰るところだった。


「あれ?もう帰るの?」


郁斗が声をかける。


「愛ちゃんの具合はどうなんだ?」


千波が浮かない顔の弟を見る。


「寝たから大丈夫だろう」


「愛ちゃん、可哀想・・・」


日菜が泣きそうな瞳を郁斗に向けた。


「記憶はまったく思い出せないんだろう?」


「ん?ああ だからなおさら考えようとして頭が痛くなるんだ」


「思い出したら愛ちゃんきっと変になっちゃうよ あたし悔しい・・・」


日菜の目からとうとう涙が出てきた。


「日菜・・・」


千波が日菜の肩を抱き寄せた。



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