ノンステップ・シュガー
おしゃれな店内から香るこれまたオシャレな薫りに胸がときめく。けど、やっぱり頭から新崎のことが離れることはなかった。小暮を待っているあいだに、幾度となくも思い出される痛いキスの感触−−−。

「悪りぃ悪りぃ、待たせた」

私達は店の奥の席をえらぶと、二人同時に腰をおろした。高校生の男女が二人で一緒にいるところはあまり見られたくない。かつ、話しやすい場所がいい。ここは私達のいつも行くお決まりの場所なのだ。
「コーヒー、二つ」小暮が手をピースの形にして、かしこまりました、と頭を下げる店員さんにいった。…この人身長高いし、なんか、新崎に似てるな…なんて不謹慎なことを考えてしまう。
その考えを振り払い、カバンをおくと小暮に目をやった。背筋を伸ばして話すのは小暮のクセなんだろうが、目の前でいつもながらピンと伸びる背筋に、またまた不謹慎にも、ついかわいいなと思ってしまうのだ。

「で。話したい内容はよく分かるけども」

テーブルの上に両手をおいて高い声で小暮が話す。「新崎千春のこと、だよな」確認するように問う小暮がなんだかたのもしい。いつもはただの馬鹿なのに、こういう時だけ真剣になる小暮に私はコクンとうなずく。

「おまえ、あいつのこと好きなんだろ?」

唐突につかれた核心にびっくりする。「なんで」

「そりゃあ見てりゃ分かるよ。おまえがあいつのこと見る目ってば女の目だもんな」

あ、案外鋭いじゃないか小暮君。クラス最下位の、お馬鹿だけど。「あ、今俺のこと馬鹿だって思っただろ」「な、なんでわかったのよ」「…図星かよ」

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