きゃっちぼーる
「昼休みよ。今日の昼休みに気づいた。麻生さんも気づいたみたいね。どうして今まで気づかなかったんだろう。それが不思議」

 一哉から視線をそらした恵が、唇をかみ締めて言った。

「目立たないようにしてたから。麻生さんや君のように勘が鋭い人に見つかる時もあるけど……それにしても」

 一哉は、参りましたという気持ちで恵に顔を向けたまま答えた。

「無視してくれてかまわなかった」

「そうはいかない。あなた、死んでいる」

「知ってる」

 一哉は恵に向けた目を細め、小さく言った。




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