きゃっちぼーる
「わたし幽霊が見えちゃうんだ。見てしまったらどう思うかっていうとさ。成仏して欲しいと思うの。お寺の娘だからってわけじゃ無いけど。導こうか?」

 恵の額から頬にかけ、一粒、汗が垂れた。

 一哉は自分の顔が火照るのを感じた。

「余計なお世話だよと言っても聞いてくれないだろうね。秩序を好む君たちみたいなクソ真面目な人は特に。僕は好きで居残ってるんだけどな」

 少しだけ口調を強くして返したあと、額を手で拭い、改めて顔を上げて恵を見つめた。

「輪廻の渦に入ることは秩序なの。例外があってはいけない」

「秩序だけで世界ができていると思うかい?」

「世の中、君のような人ばかりになったらどうする?」

「僕には関係ない。そうなったらそうなったと思うだけ。僕はこのままだよ」

「自己中心的。浅い。ガキっぽい」

「ガキだもの。死んだ年は君と同じ年さ」






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