いちえ
せっかくこうして、みんなで楽しんでいるのに、場の空気を悪くしたくない。
心配そうな顔をするおばさんとおじさんに、私は大丈夫と精一杯笑って見せた。
「俺こいつ寝かせてくる」
……えっ!?
えぇっ!?ちょっ…と待って!?
「それがいいわ。瑠衣ちゃんと付いて見ててあげなさいよ!!」
「瑠衣、お父さんがももちゃんを見ててあげようか」
「……もも。行くぞ」
戸惑う私を余所に、瑠衣斗に腕を掴まれたままたたされる。
何を言うよりも早く、私の意志なんて全く無用らしい。
「あっ、あの私大丈夫だよ!?」
「ももおやすみ〜!!頑張って彼女作ってくるからな〜!!」
どうやら私はこのまま寝るらしい。
相変わらず浮かれっぱなしの龍雅は、やっぱりこの際置いといて、宗太を見てもニコニコと笑って手を振るだけだ。
その笑顔の裏に何かを潜めているようで、読み取ろうと試みても無駄に違いない。
「ゆっくり寝ろよ〜」
「……はあ…」
みんなに見送られながら、何か裏があるように感じる私は間違っているのだろうか。。。
先程よりも引きつる頬を貼り付けたまま、瑠衣斗に引きずり出されるようにして食卓を離れた。
掴まれた腕から感じる瑠衣斗の手の温もりに、目眩を起こしそうだった。