いちえ
「そうか」
納得したような返事をしながら、出入り口で立ち尽くす私を置いて、瑠衣斗が何の戸惑いもなく部屋へと足を踏み入れる。
そんな様子を見つめていた私に、突然瑠衣斗が振り返り、それにまた驚かされる。
瑠衣斗には前科がありすぎた。
それもこれも全部、瑠衣斗のお陰で私がこんなにも意識しているわけで。
「…何1人で百面相してんの?」
「え!?」
「来いよ」
「………」
いろいろと考える猶予もくれないらしい。
おずおずと部屋へと完全に踏み入れた私をよそに、瑠衣斗は手際よく布団を用意している。
思わず見とれていると、チラリと目が合う。
「…睨むなよ」
「………」
手伝おうと近付くと、そのままポンと枕を持たされ、訳も分からず立ち竦む。
テキパキ動く瑠衣斗は、やっぱり無駄がなく、手慣れた様子だ。
あっという間に整えられてしまい、間抜けにも私は枕を抱えたまま立ち竦むだけで、結局何もできないまま終わってしまった。
「よし、寝るぞ」
すごーい…プロのベッドメイキングみたい。
ぼんやりと立ち竦む私に、瑠衣斗は躊躇する事なく私の肩を抱く。
突然の接近戦に、抱えたままの枕をギュッと抱き締めた。
「なあ、お前まじ熱あるだろ。顔真っ赤」