いちえ
間近に迫る視線に、気付かない振りをして視線を落とす。
そんな抵抗も虚しく、そっと頬に優しく手が添えられ、その手がゆっくりと顎から首筋へと流れる。
全身に電流でも流れたのかと思った。
反射的に離れようとした私を、肩に回していた腕でそのまま押さえ込む。
ビックリする程、私のそんな力になんて微動だにしない。
改めて力強い腕を意識させられると、今度こそ全身に血が巡る感覚がして、体が熱くなる。
「もも?大丈夫か?」
「……大丈夫」
なワケないじゃん!?
「ほれ、早く横になれよ」
「うん…ありがとう」
血圧が急激に上がったように、目の前がチカチカする。
耳が気圧で圧迫されたように、ツンと突っ張る。
心臓が、壊れてしまうんじゃないかと思える程、瑠衣斗の言動に反応しまくっている。
体温が、2°上がった気がした。
「ねえ、るぅ?」
そっと布団に潜り込んだ私は、タオルケットを掛けてくれている瑠衣斗を見上げた。
「――ん?」
一瞬手を止めた瑠衣斗は、視線を私に向けてから、再び手を動かしてタオルケットを完全に掛けてくれた。
何だかフワフワとした気持ちのまま、瑠衣斗を見上げた。
私の視線に気付いた瑠衣斗は、目が合うとふわりと笑い、そのまま胡座を組んで腰を下ろす。
私、本当に熱があるのかもしれない。
胸がギュッと縮んで、息もし辛いんだ。
「ありがとう」