いちえ
一瞬、不思議そうに目を見開いた瑠衣斗は、次の瞬間にはふわりと微笑んだ。
思わず見とれずにはいられないような表情に、胸がキュンと切なく疼く。
「何だよ、改まって」
そう言いながら、私の頬に優しく触れた指先は、そのままそっと額の髪を払うようにしてなぞる。
何だか無性に恥ずかしくなり、視線をすぐ伏せる。
ああ…私、るぅが大好きなんだ。
気が付くと、すぐに離されると思っていた瑠衣斗の手が、優しく何度も私の頭を撫でている。
小さな子供を寝かせつけるような、そんな優しい手の温もりに、気持ちの蓋が開いてしまいそうで。
このまま、今の感情のままに気持ちを言葉にできたら、どんなに楽だろうか。
すぐそこまで押し迫ってきているただ一言を、私はグッと飲み込む事でやり過ごすしかない。
意気地なし。
私にピッタリな言葉だ。
「何でもない。ねえ、何で部屋別なの?」
「あいつら明日早いだろうし。もも起ちゃうだろう?」
「起きちゃう…かな?」
笑いながら言う瑠衣斗に、それ以上は何も言えなかった。
笑うと見える八重歯が、拍車をかけるように胸をキュンとさせる。
そんなに無邪気に笑われたら、本当に心臓が壊れちゃうよ。
「もものおでこは子供みたいだな」
「……へ?」
「おでこ。子供みてえ」