いちえ
「お邪魔しまーす」
「し、失礼します…」
瑠衣斗に続いて、そっと断りを入れて中に入る。
用意してもらった、来客用のスリッパで中にはいると、ひんやりとした冷気に肌の火照りが冷やされていく。
うっすらと額に汗を滲ませた瑠衣斗は、躊躇する事なく職員室の中へと踏み入れる。
他にも数人先生が居るが、穏やかな笑顔で挨拶をしてくれるだけで、みなそれぞれの作業を手を休める事なくこなしている。
ペコリと会釈程度に頭を下げる瑠衣斗に見習い、私も頭を下げる。
前を歩く橋田先生も、何の気なしに先を行くので、瑠衣斗の知っている先生は橋田先生以外は居ないのだと分かった。
沢山の書類に囲まれたデスクが、通路を作るように並べられ、その間を先導されるように歩く。
学校独特の埃っぽい香りが、心なしかホッとさせた。
そのまま、職員室内にある背の高い仕切りのある空間を抜けると、広いテーブルとソファーが現れ、引っ張られるがまま腰を下ろした。
やっぱりずっと手を握られたままで、何となく離しようにも離せないままだった。
「ちょっと待ってろ。飲み物ぐらい出さないとなあ」
「どーぞお構いなく。でも喉乾いた」
そんな瑠衣斗の言葉に、クスクスと笑う橋田先生は、私の顔で視線を止め、再びふわりと笑う。
ドキリとして、私はそのまま慌てて頭を下げ、そんな私の姿に橋田先生は笑いながら背を向けた。
何で笑われてるんだろ…。私って挙動不審だったりするかな。
何だか落ち着かなくなってきて、私はキョロキョロと視線を彷徨わせた。