いちえ
「あ…すみません」
「ミルクとかは?」
「いえ、何もいりません。ありがとうございます」
やっぱり何だかホッとする橋田先生ではあるが、緊張する事には変わりない。
それに、瑠衣斗が気になって仕方がなかった。
コルクでできたコースターと共に、ストローの入れられたアイスコーヒーがテーブルに3つ並べられる。
瑠衣斗も何も入れない事が分かっているのか、橋田先生は何も言わなかった。
「それにしても…いつぶりだ?去年か」
「そうだな…いつもより少し早い」
2人の会話を聞きながら、出してもらったアイスコーヒーに手を伸ばす。
「いただきます」
一口慎重に口に含むと、とても薫りの良いほろ苦さに、肩の力を抜いた。
できれば両手でグラスを持ちたいんだけど……やっぱり瑠衣斗は、手を離してくれる気配はなかった。
そっとコースターへとグラスを戻し、落とした視線を橋田先生へと向ける。
「彼女は…唯ノ瀬さんは…」
「今日、話すつもり」
思ってもみなかったタイミングで、自分の名前が登場する。
話の筋が読めなくて、橋田先生と瑠衣斗を見比べた。
えっ?な、なに?私がなに?
そう思った所で、瑠衣斗の言っていた言葉が鮮明に蘇る。
言わなきゃいけない事…。その事を言っているのだろうか。