いちえ
脱力感でいっぱいな私は、頭の中が真っ白になっていた。
橋田先生の言葉は、衝撃的な物でもあり、まるで私の気持ちを見透かしているようで。
でも不思議と、嫌な気持ちは一切なかった。
「そうだ。唯ノ瀬さん、卒業アルバム見たい?」
「見たい?とかそーゆう余計なモンいらねえから!!」
「じゃあ〜…瑠衣の起こした問題の数々を教えてあげようか?」
「どーせなら良い事教えろよ!!俺はそんなに問題児だったか!?」
「強いて言うならば…頭の良い不良だったな」
「…激しくかっこわりいな。ソレ」
坂道を転がるような話の展開に、切り替しがついて行かない。
曖昧に笑う事しかできなくて、2人の言い争い…話を聞く事しかできない。
そんな中、頭に浮かぶのは8月の冷たい雨。
脳にこびり付いたままの鮮明な記憶が、チラチラと姿を表す。
私は今まで、どうしてこの人生を生きてきたのだろうか。
確実に分かる事と言えば、それはそこに、自分の人生には自分の意志なんて全くなかったという事。
「卒業アルバム持ってこようか」
「いらねえ。うちにある」
ただの自己満足…。それは分かっている。分かっていたんだ。
衝撃的な言葉ではあっても、それは答えではない。
答えは自分で出すもの。
どう生きるかは、自分で答えを出す事。
さすが、学校の先生だな…なんて思った所で、ようやく私は笑えた。
「卒業アルバム、見たいです」