シィ君のサンタクロース
――“帰る”。


その選択に胸がぎゅうって苦しくなる。


帰りたいわけがない。


だって、ずっと楽しみにしてたんだもん。



泣きそうになって部屋を見渡した。


シィ君と一緒に飾りつけをした部屋とツリー。


それから一緒に作ったお料理。


こんなのが全部無駄になっちゃうの?



「でも……もう暗いし……。こんな時間からまた運転するなんて、シィ君、大変じゃない?」


こんなことが言いたいわけじゃない。


なんとかして、帰れない理由が欲しかっただけ。


どうしても帰れなかったんだ

……っていう理由が。



それなのに、シィ君はうーんと伸びをすると、コキコキと首を鳴らして、いともあっさり答える。

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