幻妖奇譚
 机の上に転がされたクシャクシャに丸まったもの……。


「じゃあねぇ、沙希。また明日……遊んであ・げ・る」

 悔しい……!!でも、泣くもんか。ママは悪くないし、パパだって悪くない!

 丸まったものを破らないように、そーっと広げて伸ばして行く。

「……これじゃ、見せられないよ……」

 シワシワのプリント――“友達とふざけてたの”……だめ。カンがいいパパに気付かれないわけがない。


 一番良いのは見せない事……。帰り道、パパへの言い訳を考えている内に家に着いてしまった。

 カギを開けようと鍵穴に差し込み回すと、ガチャッ、とロックが掛かった。

「あれ?」


 確か、おばあちゃんは週末にしか来れないはず……。って事は……。

 もう一度カギを回し、玄関の扉を勢い良く開ける。


 キチンと履き揃えられた茶色の革靴――やっぱりパパだ!


「パパ!」

「お。お帰り、沙希」

 ただいまのハグ。あれ?でもまだ15時過ぎ。

「パパ、会社は?」

「うん。実はね、パパの会社の常務が昨夜亡くなったんだ。これからお通夜だから、喪服を取りにね」

「そう……なんだ」

 なんだ……。せっかく早く帰って来たと思ったのに。




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