うさぴょん号発進せよ

トヲルは突然思い出し、後ろを振り向いた。後ろにはトヲル達が今までいた敷地内の建物と、その向こうに赤い塔が見える。

「あの塔って確か、『東京タワー』って名称じゃなかったっけ」

「?そうなのか。よく知ってんな。まぁ、そういうのをこのドームのあちこちに建てているって話だ。しかもレトロな宿泊施設も、建設中らしいぜ」

（レトロな宿泊施設。あの『くずれ荘』もそうなのかな）

目の前の建物を見ながら、ボンヤリと思う。果たして、このような建物に泊まりたいと思う、物好きな客がいるのだろうか。

「もっとも、俺はコレで何をするかは知らないが、こんなのを実際に作ったからといって、客が集まるとも思えねぇんだけどな。んなもん実際に作るより、映像かなんかで見せた方が、安上がりだろうしさ。全く、金持ちは何考えてるか解らねぇぜ」

コウヅキは、肩を竦めてみせた。