恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「青木、釘あるか?」
ぼーっとしていた私に、鈴木先生が声をかけた。
「あっ、釘? 釘は……」
辺りを見渡すと曲がりくねった釘ばかりが落ちていて、自分がどれだけ失敗したかを表していた。
「ない……みたい」
苦笑いの私に、先生は呆れて笑みを見せた。
「どんだけ打ったんだよ……」
「だって、釘が言うこと聞いてくれないんだもん」
「おまえなぁ……」
先生が筋肉質な腕で自分の額の汗を拭くと、私は何故かちょっとだけドキッとした。
先生も男なんだよね……。
今まで先生に感じたことのない思いが、私の胸をざわつかせる。
きっとこの気持ちは、他の生徒達が鈴木先生に抱いている気持ちと一緒なんだろうな。
女だらけの中で、特別輝いて見えちゃう異性。
目を引き寄せられてしまう存在。