恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「ただいま」
家に入ると温かい空気が私を包み込んだ。
それと同時に聞こえてくる「おかえり」の声。
リビングに入った私の姿を見て、お母さんがにっこりと微笑んだ。
「それ、宮本さんへのプレゼント?」
「……うん」
お母さんはわざと鼻の下を伸ばし、目を細めてプレゼントの入っている袋を覗き込んだ。
「どんなものにしたの?」
「手袋とマフラーだよ」
「手袋とマフラーね……。
お母さんもお父さんにあげようかな」
ふふふっと笑ったお母さんは着けていたエプロンを外し、寝室に入って行った。
そして数分後、少しめかし込んだ姿になって足早に玄関を出て行った。
きっとお父さんへのプレゼントを買いに行ったんだね。
口元に笑みを浮かべたお母さんを見ただけで、胸がキュンっとなった。
好きな人を思うと胸が高鳴る
それは夫婦になっても変わらないものなんだね。
私は生まれて初めてお母さんのことを、同じ女の子なんだと意識したような気がする。