恋 時 計 ~彼はおまわりさん~


「ただいま」


家に入ると温かい空気が私を包み込んだ。

それと同時に聞こえてくる「おかえり」の声。



リビングに入った私の姿を見て、お母さんがにっこりと微笑んだ。


「それ、宮本さんへのプレゼント?」

「……うん」


お母さんはわざと鼻の下を伸ばし、目を細めてプレゼントの入っている袋を覗き込んだ。


「どんなものにしたの?」

「手袋とマフラーだよ」

「手袋とマフラーね……。
お母さんもお父さんにあげようかな」


ふふふっと笑ったお母さんは着けていたエプロンを外し、寝室に入って行った。

そして数分後、少しめかし込んだ姿になって足早に玄関を出て行った。




きっとお父さんへのプレゼントを買いに行ったんだね。


口元に笑みを浮かべたお母さんを見ただけで、胸がキュンっとなった。



好きな人を思うと胸が高鳴る


それは夫婦になっても変わらないものなんだね。




私は生まれて初めてお母さんのことを、同じ女の子なんだと意識したような気がする。









< 373 / 712 >

この作品をシェア

pagetop