恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「あの、どうしてここに?」
「え? ああ、井上から聞いたんだよ。今日あんたが帰ってくるってさ」
質問の答えになってないんですけど……。
けど、智子ちゃんが俺のことを教えたってことか。
彼の笑顔を横目に置き、俺はソファに腰掛けた。
「飲もうぜ?」
「まだ夜じゃないのに? っていうか……」
「だめ?」
「いや……別に」
彼は左手の中にあるビールを俺に向けながら、右手でもう一つのビールをプシュッと開け、どこか歯にかんだような笑顔を俺に向ける。
俺たち二人で?
初対面ってわけじゃないし、犬猿の仲ってわけでもない。だけど俺たち……。
「俺たちさ、ある意味同士だろ?」
……確かに。
彼の言葉に妙に納得した俺は、きっと最初で最後となる同士の乾杯をした。