**confection**
足早に部屋を出たももを目で追ってみるが、やっぱり胸に生まれた何とも言えない嫌な感覚が、脳を支配していく。
閉められた扉の向こうからは、物音一つすら聞こえてこなくて、ももの様子を伺い知る事なんてできなかった。
「るぅ、告んないのか?」
「う…って、……はあ?」
突然振られた宗太の声に、思わず何の気なしに頷きかけ、意味を理解した時にはなんとも間抜けな返事が出た。
告んないのか…って…、
「な、なんだよ…突然」
「いや?ただ純粋に疑問に思っただけだ」
「………」
確かに、宗太と龍雅は俺がももの事を好きだとバレている。
でも、何でこのタイミングで、何故今なのか全く持って分からなかった。
「誰だっけ。栗本?あいつ、近々ももの事呼び出し掛けるっぽいぞ」
「は!?」
まじか!!全っ然知らなかった。
てゆーか、やっぱりあいつマジなんだよな……。
あの日での俺の目の前での告白以来、目立った動きも見せなかったイガグリヤローが、ついに動くのか。
心なしか、学校ではよくこちらを見ているようだったが、何かももに話し掛ける様子もなかった。
でもそれが逆に、ももに意識させていた行動にすら思えた。
気まずそうに目を伏せるももに対して、そのたびに俺は何もできなかったんだ。
「で、どーすんの?」
「なにが……」
この先を、何となく聞きたくなくて、情けない事に俺は言葉を濁した。
「もし、ももがオッケーでもしたら。だよ」