**confection**
俺の言葉に、宗太からの返事はなかった。
ただ視線だけはそらされずに感じたが、俺は俯いたまま顔を上げれなかった。
部屋には穏やかな寝息が3つ。
ももが戻る気配は、まだない。
「るぅも気付いてると思うけどさ、ももの事」
「ん?」
「あいつ、時々すっげー寂しそうな…辛そうな顔すんの」
「………。」
正直、驚いた。
宗太がここまで周りを見ている事に、素直に顔を上げてしまう。
「それ、ちょっと違うけどお前も一緒」
そして、さらに驚くハメになる。
こんな風に指摘された事なんて、今までにない。
もう、宗太から目を離す事なんて、できなかった。
「そんな俺ら信用ねえ?誕生日にこんな事言うのもなんだけど……。たまには頼れって。ももの事もな」
なんだか知らない間に、宗太にはいろいろと感づかれていたようだ。
確信には迫ろうとはせず、俺のペースに合わせてくれているようで逆に心地良い。
気持ちが楽になると言うか…そんな感じ。
「だな…サンキュ」
離れていくのが怖いんじゃない。
離れたいヤツは勝手に離れていけばいいんだ。
そもそも俺にとっては、その方がありがたい。
俺が怖いのは、失う事。
大切な何かを、失う事が怖くてたまらないんだ。
それはきっと、いつのまにか居心地が良くなってしまった、この関係を、失う事が怖いんだ。