伝えたいんだ
笙多兄のいつも使ってた香水のにおい。
それは私の目頭を熱くさせるのに十分な効力を持っていた。
「ど……っ、して……?」
大学の門から出ていく人々が、ちらり、ちらりとこちらに目をやっていく。
迷惑そうに、
好奇なものでも見るように、
「お前が!」
「………」
「お前が悪いっ…!」
「っ、」
ねぇ、本当にどうしたの?
笙多兄。
そんな詰まったようにしゃべる笙多兄は、初めて見たよ。
「………なんで勝手に消えてんの」
……?
「………なんで黙っていなくなんの」
…………
「……、なんでっ、嘘、吐いたんだよっ…!」
「んで、笙多兄なんて、呼ぶんだよ……」
私には笙多兄がどうして苦しんでるのかわからなかった。
だって苦しかったのはずっと私だったんだよ?
何度気持ちを伝えても、
あなたは本気にすらしてくれなくて。
何度「好きだ」と伝えても、
あなたは平気で私の中の傷を抉る。