父さんと僕
「なんで?」


「お金を借りる人っていうのはね、金がないから借りるんだ。それでね、取立てが毎日晩御飯の時に来るんだよ。怖いお兄さんたちがね、ドンドンと扉を叩くんだ。金返せー!ってね。毎日夜7時にきっちり来るんだ。とても怖かった」


 雄太は想像しているのだろう。とても怯えた表情になる。


「それだけならいいんだけどね。毎日取立てが来たら家族の仲も悪くなるんだ。ストレスがたまるからね。お父さんとお母さん、まぁ雄太からすればお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが喧嘩するんだ」


 子供の目の前で喧嘩をする親を見て、私はこうならないでやろうって硬く誓ったのを覚えている。


「お父さんが包丁を持ち出して、お母さんに『お前を殺して俺も死ぬ!』って叫ぶんだ。そしてお母さんは『えぇそうすればいいわ!死んでやる!死んでやるー!』って包丁に向かって飛び出すんだ。まぁ結局どちらも死ななかったんだけどね。そのせいで弟の実が泣くんだ。それを慰めるのが私の仕事だったなぁ」

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