父さんと僕
 立ち上がって二階に行こうとする私に妻はついてこようする。


「千鶴はついてくるな。父親にしか話せないことだってあるだろ?」


 だが、そうはさせてあげれない。


「――でもっ!」


 泣きそうになりながら妻は行かせてくれと訴える。


「心配するな。雄太は強い子だ。必ず自分の力で乗り越えられる。無理ならその時はその時で考えよう」


 私達の子供なのだから自分でどうにかできるはずだ。


「何であなたはそんなに冷静なの!」


「冷静?何を言ってるんだ」


 いつもの妻なら私の今の状態を冷静なんて言わないだろう。


「――私は雄太をイジメた奴らに対する殺意で一杯だよ。頭がおかしくなりそうだ」


 私は今、見たことすらないであろう雄太をイジメた奴らを殺したくて仕方がない。 


「けど、それじゃあ何も解決しない。何よりまずは雄太から話を聞きたい。それからどうするか決めたって遅くはないだろ?」


 妻はなんとか頷いてくれた。さて、息子と話をしに行くとするか。
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