指切りげんまん
ため息をつきながら自身の鞄を漁り30cm程の小太刀を取り出す。

改良を重ねたそれは刀身こそ細いが殺傷力と強度は劣らなかった。


柄に彫られた、日本刀に似合わない英語をなぞる。
恐らく佑のリボルバーにも彫られているのであろう。

何度も棄ててしまおうと思った組織の名前。
逃げ出すことは自分自身が許さなかったのだけれど。

「海斗…」

「え、なんか言った?」

佑の声で自分が物思いに耽っていたことに気付く。

「なんも言ってないよ」


忘れなきゃいけないから否定した、大切だった貴方の名前。


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