指切りげんまん
瞼の裏に移りこんだあの人の残像を意識的に追い出す。

ふと上を見上げると佑の顔がすぐそこにあった。

「奏…大丈夫?」

「お前の顔面にびっくりしたわ!」

悲鳴こそはあげなかったが心臓が早鐘を打っている。

「酷い!
すっごい百面相してたから心配したのに!」

「だからって至近距離で見るのはやめてよ!」

いつの間にか子供の喧嘩になっていた。

「…アホらし」

「お前こそな」

それに気付き百歩譲って口論をやめたが、つくづくこの男はムカつく奴だ。



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