『花、愛でる人』

手を繋いで歩き出すのは、いつもと変わらない帰り道。



けど、



「ちょっと寄り道しよっか」



春の空気と、堤防の花に誘われるように蓮が緩やかな傾斜へとわたしを座らせた。




「……ちょっと待ってて」



それだけ言い残して蓮は、堤防を駆け降りて少し離れた場所へとしゃがみ込んでる。




……どうしちゃったんだろ。



しばらく見てたけど……蓮は当分そこから動き出しそうにない。



手持ち無沙汰になった両手をつくと、



「なずなだっ」



なずなの花が、こじんまりとそこら中に咲いていた。




「そうだっ」



どうせ蓮も何かしてるし……。
そう思って手当たり次第になずなを摘んで花束を作っていく。




あっちもこっちもって欲張っているうちに、わたしの手はなずなで一杯になっていた。



早く蓮に渡そうっ。



そう思って、後ろを振り向こうとしたとき、



「夢梨」


「えっ……あっ」


わたしの頭にふわっと載せられたものに、そっと触れてみた。


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