another contract



眠っていると、体に何かが掛けられる。
閉じていた重いまぶたをそっとあげ、それを確認すればタオルケットだった。
視線を上げれば、桃がそこに。
そして確信。
桃が掛けてくれたのか、と。
部屋を出て行こうとする桃の手を俺は反射的に掴んだ。

「‥お、おはよう。」
「ん~‥‥」

やべぇ、昨日何時に帰ったけ?
体は結構疲れてるみてぇだ。

「今日で‥‥最後ですね。」

桃は、どこか悲しげにそう言った。

「ああ‥そうだな」

そんな顔してそんな事言われたら、なんて答えりゃいいか分かんなくなるじゃねぇか。
でも‥‥本当に、今日で最後にする。
俺は俺自身の未来も命も掛けてんだ。

「なぁ」
「はい?」

分かってる。
俺は俺自身の事を気にしたりしちゃいけねぇ。
気にしたら、後戻りするかもしれねぇ。

「本当に、今日で最後だぜ?」
「あ、うん‥」
「今までゴメンな」
「何が?」
「俺の親父が」

本当に、最後にするつもりなんだ。
俺は。

だから‥‥

「あと、本当にいろいろありがとな」
「あ、ううん。私だって‥ありがとう」

笑えよ。

「ゴメンな」

ここまで来たら、後戻りは出来ない。
いや、するつもりも無ぇ。

『だがな、紅。屋敷で雇っとる“餌”と“契約”したら‥‥』

別にどうでもいい。
桃がこの先笑っていけるなら。
俺はどうなったっていい。

触れる唇は、暖かかった。
桃はたった今、自分がどんな立場になったかは分かってないだろう。



パンッ!!


< 23 / 50 >

この作品をシェア

pagetop