another contract
眠っていると、体に何かが掛けられる。
閉じていた重いまぶたをそっとあげ、それを確認すればタオルケットだった。
視線を上げれば、桃がそこに。
そして確信。
桃が掛けてくれたのか、と。
部屋を出て行こうとする桃の手を俺は反射的に掴んだ。
「‥お、おはよう。」
「ん~‥‥」
やべぇ、昨日何時に帰ったけ?
体は結構疲れてるみてぇだ。
「今日で‥‥最後ですね。」
桃は、どこか悲しげにそう言った。
「ああ‥そうだな」
そんな顔してそんな事言われたら、なんて答えりゃいいか分かんなくなるじゃねぇか。
でも‥‥本当に、今日で最後にする。
俺は俺自身の未来も命も掛けてんだ。
「なぁ」
「はい?」
分かってる。
俺は俺自身の事を気にしたりしちゃいけねぇ。
気にしたら、後戻りするかもしれねぇ。
「本当に、今日で最後だぜ?」
「あ、うん‥」
「今までゴメンな」
「何が?」
「俺の親父が」
本当に、最後にするつもりなんだ。
俺は。
だから‥‥
「あと、本当にいろいろありがとな」
「あ、ううん。私だって‥ありがとう」
笑えよ。
「ゴメンな」
ここまで来たら、後戻りは出来ない。
いや、するつもりも無ぇ。
『だがな、紅。屋敷で雇っとる“餌”と“契約”したら‥‥』
別にどうでもいい。
桃がこの先笑っていけるなら。
俺はどうなったっていい。
触れる唇は、暖かかった。
桃はたった今、自分がどんな立場になったかは分かってないだろう。
パンッ!!