『naturally』
「シェナを待ってたら日が暮れる。良いから連れて入りなさい」
あれからリューシュがシェナを連れて現れたのは、二人きりの結婚式を挙げた直後のことだった。
真っ白なドレスに身を包み、恥ずかしそうにはにかんだシェナの顔が頭の中に灼き付いて離れない。
リューシュの隣に立つシェナは、どんな女性よりも幸せそうに見えて仕方なかった。
「そうですね。……いいか。何も猛獣の檻に入ろうってわけじゃねんだ。それに、俺がいる」
こう言って屈託無い笑顔をシェナに向け、すぐ傍にあった手を握ってやる。
「……わかった」
リューシュが握り締めた手から温もりが流れ込み、強張っていたシェナの表情が和らいでいく。
「じゃあ義父上。行ってきます!」
シェナの手を引き、一歩前を行くリューシュに微笑みを返した父は二人の背中を見送った。