『naturally』
「ただいま戻りました! ……ってのも変だな。俺の生家ってわけじゃねんだしな」
王と王妃の二人がいると案内された応接間をノックし、軽く一礼しながらブツクサとリューシュが何やらぼやき始める。
「何を言ってるんだおまえは……。久々に顔を見せたかと思えば」
「あなたたちが早く入って来ないから拗ねちゃったのよ?」
細やかな装飾の施された椅子に並んで座る二人を、シェナは直視出来ないでいた。
大らかそうな顔を少しだけ不機嫌そうに歪めた王は、リューシュに早く座るように手招きしている。
その隣で優しげな笑みを携え、王妃は二人を暖かな歓迎の眼差しで見つめていた。
「父上母上。ご報告が遅れました。これが……」
「御託はいい。どうせナッシュかセルシュに言いつけられたんだろ? それよりも、我が家の新しい家族の顔を見せてくれないか?」
珍しく真面目な顔したリューシュの言葉を遮り、痺れを切らせた王がシェナの紹介を促す。
その顔にはさっきまでの不機嫌さなど、微塵も残っていなかった。