『naturally』
「なぁ。どうしたんだよ?」
「……ここ、来て良かった」
「えっ?」
咽びながらも、リューシュの腕の中で言葉を紡いでいくシェナは、幸せそうな笑みを浮かべている。
「王妃に……リューシュの母様に会えて良かったっ」
「おまえの母親でもあるだろ?」
リューシュのこの言葉が嬉しくて、泣きながらシェナはにっとはにかんで見せる。
「……嬉しいっ」
自分にも大切な家族が出来た。
喜びでリューシュの背中に回していた腕に更に力を込め、シェナは泣き笑いの顔を胸に埋めた。
「次に来るときは、報告だっ」
「報告……?」
「おうっ。孫が出来たって報告」
こう言ってニシシっとイタズラっぽく笑うリューシュを前に、シェナの涙は驚きで止まり顔は一気に赤面した。
「はははっ。冗談だっ。暫くは二人の時間でもいいだろ?」
潤んだままのシェナの瞳に唇を寄せ、リューシュは愛おしげに髪を何度も何度も撫でた。
しかし、数週間後。
この時のリューシュ願いも虚しく、二人がまた両親を訪ねることになることをまだ、二人は知る由もなかった。
終
