『naturally』
そして王妃は笑う。
その温かい笑顔に包まれている安心感で、シェナの流す涙はいつの間にか嬉しいモノに変わり、ますます瞳から溢れ出した。
「あらあら~。泣き虫なお嫁さんね。こんところリューシュが見たら……」
「えっ!? なんで泣いてんだっ? 嫁姑問題かっ」
タイミング良くか悪くか、どうにか王の手中から逃げてきたリューシュが、思いがけない光景に急いでシェナに駆け寄った。
「人聞きの悪いこと言わないで頂戴」
王妃の言葉と共にシェナは首を振り、リューシュの言葉を慌てて否定してみせた。
これ以上心配をかけまいと空いた両手で涙を拭うが、追いつかないくらい涙は流れて落ちる。
「リューシュがシェナを置いていったりするからよ」
「あれは無理矢理! …………悪かった。シェナ」
王妃の冗談を真に受けたリューシュが、申し訳なさそうにシェナに謝り、自分の方へと抱き寄せる。
「ふふふっ。さぁ、お父様のお酌は代わるから、シェナはリューシュに任せましたよ」
こうするのが一番と踏んだ王妃が、思い通りの反応をしたリューシュに微笑みながら部屋を出て行ってしまった。