時間屋
動きが現れ始めたのは、帰宅途中だった。
例によって、下校も志乃と一緒。
校門を出ると、不吉な気配を感じとった俺は、志乃に小さく問いかけた。
「…狙われるとき、相手はいつも何人だ?」
「え?…3人だけど…」
極限まで、耳を澄ます。
確かに、感じる。
俺たちの後に、複数の人の気配を。
怪しまれないように、俺は前を向いたまま、小声で言う。
「…後ろからつけられてる。馬鹿、前向いてろ」
後ろを振り返りそうになった志乃の肩を、俺は慌てて引き寄せる。
「くくく空雅くん!?」
顔を真っ赤にする志乃に、静かに、と言い聞かせる。
「…俺が合図出したら、走って撒くぞ」
「…わ、わかった」
背後の気配が、ほんの一瞬遠のいた。
そこを狙って、俺は叫ぶ。
「走れ!!」
俺たちが走り出すとほぼ同時に、背後の気配も動く。
志乃の家まで、あと少しだ。
頑張れば、追いつかれる前に家に逃げ込める。