音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~




「はぁー」


「どうしたの?」


「んー、なんでもない」


家に帰ってきても考えるのは、自転車置き場でのいっくんとのやり取り。

あたしだってあんな突き放したような言い方じゃなくて、もっと優しい言い方とかあったのかなと、反省する。

でも…… だめだめだめっ。

あれ位いっくんには強く言わなきゃ絶対にバレてしまう。

どうしても今、バレるわけにいかない。


「ケンカしたの?」


「うん、まあそんなとこかな……」


「えぇー!! まおちゃんがケンカッ!」


…… ちょっと、理央ちゃん。

あたしを一体どういう目で見ているの?

あたしだってケンカくらいするよ。

でも、今回はあたしの一方的なわがままのせいだけど……。


「誰としたの?

菜々先輩? それとも高校の友達?」


理央ちゃんのその質問に、少し考えしまう。

いっくんって高校の友達?

そりゃ小さい頃は仲が良かったけど……。

高校になるのかな?

同じ高校って言っても、そんなに普段から話すようなことは無い。

そして、特別仲がいいってわけでもない。




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