恋 理~renri~


その行き先はもちろん・・・



通勤時間は少し掛かるけれど、直通電車で行ける便利な立地の会社だ。



朝のオフィス街特有の慌しい喧騒が、どこか私を冷静にさせていく…。




会社に到着してまず向かうのは、社内のプチ自慢らしい少し広い更衣室。



自分のロッカーを開ければ、素早く準備と言う名の作業開始…。



髪はフルアップに纏めて、唇にはルージュを塗る。



仕上げに香水をシュッと吹きつけ、茶色の縁メガネを掛けて終了。



我ながら実に慣れたもので、僅か5分でこの一連の作業が完成出来るのだ。



締めくくりにヒールの高いパンプスに履き替えれば、もう一つの顔になる――




鎧を纏って戦場へと向かう兵士のように、冷酷な仕事士の自分へと・・・




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