うちの所長知りませんか?
代表さんが立ち上がる。

「君がなにを言ってるかわからないね、お引き取り願おうか?」

「いえ、そうはいかないんです」

また一歩進む。僕と彼の距離は、腕一本分。

「アナタ達が大恩寺さんを監禁しているのはわかってます。大恩寺さんを出してください」

「だから、なにを根拠にし」

「大恩寺さんは、姿をくらますまでにいくつかのメッセージを残してくれています。それが、アナタ方……推理小説研究会が犯人だって言ってるんです」

「ほぉ……?」

後ろにいた三つ子のひとりが動いて、パイプ椅子がひとつ出された。僕の後ろに置かれる。

「聞こうじゃないか、君の推理をさ」

ずいぶん、挑発してくれる……ひょっとしたら本当に大恩寺さんを知らないのかもしれないけど……こうなったら度胸だ。

「まず、化学室に残されたメッセージがあります。それは、『水素とリチウム』。最初、意味がわからなかったんですけど、あそこの机にあった落書きでわかりました。あれは元素記号暗記文に見立てたメッセージなんです」

そう、中学生くらいなら習うこと。元素記号の並びを暗記するのに、『水兵リーベ僕の船……』というあれだ。
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