うちの所長知りませんか?
沈黙が、降りた。

それが、図星による沈黙なのかはわからない。

けれど、僕はやめない。

「当然、そんなことがもし本当にあってるなら、推理研究会も推理小説研究会も焦ったでしょう。どうにか活動を目立たせようとする……あるいは、相手の研究会へ妨害に入る」

「……それで、僕らが大恩寺めもりを監禁した、って?」

「そうです。だから僕は、あの『水素とリチウム』というヒントから、『すいり』という答えに行き着いたのには、すごく納得しています。大恩寺さんがいなくなったのは、そんな研究会の抗争によるものなんですから」

ぱち、ぱちぱちぱちぱち……と、彼が拍手する。その顔には、けれど嘲りが浮かんでいた。

「おもしろいね。君、演劇部で脚本をやったほうがいいよ。書けるのは三文ミステリーだろうけどね」

彼は、足を組み替えた。キザだ。

「それで、なぜその『推理』という単語からうちを? もしかするとその『推理』というのは、うちじゃなく『推理研究会』のほうかもしれないじゃないか」

「それはありえません」

「えっ、なぜですっちゃ?」

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