LAST contract【吸血鬼物語最終章】
「浦さん?今何か‥うわぁ!蜜柑だぁ!!」
僕が倒れた時の音が聞こえたのだろうか。
スミレが生徒会室から出てきた。
「よう、菫。後でこの蜜柑、半分貰ってな」
「え、いいのぉ!?」
「もちろんや。甘くて美味いで~」
「やったぁ!有り難う」
蜜柑を貰えてご機嫌な様子のスミレを見たら、自然と笑みが零れる。
その時、金ちゃんは小さく僕に耳打ちした。
「お前、早いうち血ぃ飲まんとヤバいで」
「‥分かってる」
「記憶が無いから貰いにくいのは分かる」
でも、お前の命が掛っとるんやで。
金ちゃんは俯いた僕に、真剣な眼差しを送った。
「じゃ、こっちは紅に渡しとってな」
もう一つの紙袋も僕に差しだして、ポンポンと僕の肩を叩くと、金ちゃんは去っていった。
「美味しそうだね」
そうやって笑うスミレの笑顔を、あの時のように凍らせたくはなかった。
一度過ちを犯したんだ。
二度目となると、スミレは本当に僕に接さなくなってしまうだろう。
それは、僕にとって辛すぎる事。
例え記憶が無くても、傍にいて欲しい。
だから、今のお前から血をもらう事なんて出来ない。
それが
“死”を意味しようとも‥‥。