LAST contract【吸血鬼物語最終章】
ポケットから愛用のミュージックプレーヤーを取り出して、イヤホンを耳にセット。
でもって、軽く準備体操。
「よっと♪」
そして体に勢い良く回転を掛けた。
スカートの下には、長めのスパッツ履いてるから心配無し。
くるくると体を回しながら見た空は、何処までも果てしなく灰色だった。
龍か何か出てきそうな感じ。
その時、ふわりと一つの白が、ボクの目の前を横切った。
「あ、雪だ‥」
空からふわふわと舞い落ちてくる雪に、ボクは動かしていた体を止めて見惚れた。
綺麗な、真っ白い雪。
その時、屋上の扉が開く音がして、ドキリとボクの心臓が飛び跳ねる。
‥‥もしかして、アオちゃん?
そろぉっと振り返ってみると、予想していた愛おしい人ではなく、さっきの女の子だった。
確か、隣のクラスの神上鳩羽。
あ~、なんか気分悪。
アオちゃんの上にいつまでも乗ってたし、
挙句の果てにはキスするし。
ボクはその子の隣を無言で通り過ぎて、校内に戻った。
「ねぇ、待って!」
その子はそう言って、階段を降りるボクを中途半端な位置で止めた。
「何?」
「貴方、葵様と付き合っているの?」
ボクの隣まで追い付いた彼女は、ボクを鋭い目で睨む様に見た。
‥‥葵、様。ねぇ‥
アオちゃん狙いの人か‥。
「‥そうだけど?」
「‥そうなの、ごめんなさい。それを確認したかっただけなの」
笑顔でそう言った彼女。
変というか、何かイヤな感じがする。