いとしいひと


「誰だよ…!?アンタっ」


“かわいそう”だと?


「ふざけた事言ってんな。

…お前、最低だな」


コイツが朱里ちゃんの好きだったヤツ…?


…出会った頃、朱里ちゃんは失恋したって言って哀しそうに笑ってた。

あんな顔をさせたのはコイツか……?


こんなヤツの為に朱里ちゃんは傷ついて。


こんなヤツの為に、大事にしてた髪を切ろうとまで…


すっげームカつく。


俺より背が高いくせに、俺に怯えてるこの男。


…もう、殴る気すら失せた。



「馬鹿だよ。お前」


そう言って手を離した。



だけど、俺もこのままじゃ…ただの馬鹿だ。


俺は走り出す。




逢いたい。



“俺が”朱里ちゃんを笑顔にしたい。


たとえそれが、どんな形になったとしても。



……俺の想いは叶わなくても。



君に笑顔でいてほしいんだ。








< 72 / 86 >

この作品をシェア

pagetop