いとしいひと
「誰だよ…!?アンタっ」
“かわいそう”だと?
「ふざけた事言ってんな。
…お前、最低だな」
コイツが朱里ちゃんの好きだったヤツ…?
…出会った頃、朱里ちゃんは失恋したって言って哀しそうに笑ってた。
あんな顔をさせたのはコイツか……?
こんなヤツの為に朱里ちゃんは傷ついて。
こんなヤツの為に、大事にしてた髪を切ろうとまで…
すっげームカつく。
俺より背が高いくせに、俺に怯えてるこの男。
…もう、殴る気すら失せた。
「馬鹿だよ。お前」
そう言って手を離した。
だけど、俺もこのままじゃ…ただの馬鹿だ。
俺は走り出す。
逢いたい。
“俺が”朱里ちゃんを笑顔にしたい。
たとえそれが、どんな形になったとしても。
……俺の想いは叶わなくても。
君に笑顔でいてほしいんだ。