Happy garden.【短編】
そのせいもあって、ヒールの高い靴は履かない。
今日は5センチだけど、普段は専ら1、2センチのローヒールだ。
行きは下りだからいいんだけど、帰りはただでさえ疲れてるのに上り。
くたくたの足で上るのは、わたしには重労働に感じる。
そんなことを考えてるうちに、アパートのすぐ前まで来て、不安になった。
まさか、同じアパートに住んでないよね?
ドキドキしながら誠司さんの動向を見守っていると、彼の足はアパートの玄関口を素通りし、わたしはホッと小さく息をついた。
さすがに、そこまで偶然は重ならない。
さらに、信号を3つ渡ってすぐ、グレーのアパートの前で立ち止まった。
「ここやから」
ポケットから手を出して、アパートを指さす。
わたしはそれを見て、うなずいた。
わたしのアパートより高く、7、8階はありそうなソコは、アパートというよりもマンションと言ったほうが正しいのかもしれない。
独身者用の賃貸マンション。