Happy garden.【短編】
ひと部屋につき一つは借りれそうな広い駐車場が建物の横にある。
大きな玄関口は道に面してあり、中に入るととても綺麗だった。
外観も綺麗で、おそらく新しい建物なんだろう。
郵便ポストを横目に見ながら、玄関ホールを抜けると、その奥にエレベーターホールがある。
エレベーターは一機。
1階に下りていたので、すぐに乗り込むと、ボタンは7階まであり、誠司さんは6階を押した。
浮遊感をわずかに感じ、10秒ほどで6階に着く。
エレベーター自体は古いタイプなのか、一瞬で目的階につく最新のエレベーターに比べると、ひとつ上るのに時間がかかる。
そういうところにちょっと安心した。
オートロックでもないし、独身らしく安めの部屋なんだろう。
ホールに降りると、廊下は左右に伸びていて、誠司さんは右の道を行く。
ついていこうとすると、彼はすぐに止まった。
603号室、そこが彼の部屋だった。
表札に名前は書かれてないので、苗字はわからないままだ。
「どうぞ」