Happy garden.【短編】

左奥の壁側には本棚とクローゼット。


この辺りの土地が安いとはいえ、1DKに住むわたしとしては少しうらやましくなる。


男と女の給料の差を見せつけられた感じがする。



誠司さんは音を立てて靴を脱ぎ、キッチンで何かごそごそしていた。


何してるんだろう、と思って振り返ると、湯呑とマグカップ、割り箸を持った誠司さんがこっちにやって来るところだった。


「悪いな、小さいテーブルしかなくて」


そう言いながら、湯呑を自分の前に、マグカップをわたしの前に置くと、

テーブルの上の灰皿やティッシュ箱を床に置いた。


お礼を言いながら、マグカップの中身をひと口飲むと、温かい日本茶のおかげで、体全体に熱が広がった。



「おせち、広げられるか?」


「たぶん大丈夫です」


もともと二人で食べるつもりだったので、お重と言っても二段しかない。


二人では二段でも多いかと思って、本当は一段でおさめたかったんだけど、ちょっと作りすぎたんだよね。


男性の肩幅くらいの直径の丸いローテーブルは確かに狭いけど、なんとかなるだろう。

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